守ると決めたのに(恋→←修)




『俺が大切だと思ったものは、この手から直ぐに、零れ落ちるんだ…』

そう悲しそうに笑った顔が忘れられない。



その言葉を聞いたのは、乱菊さん開催副隊長のみの飲み会。
この人が好きだと自覚してからそれなりにアタックはしてきたつもりだ。
だけど、いつものらりくらりとかわされてしまう。
他に好きな人でもいるのかと考え、確認するため、キツめの酒を飲ませて酔わせる。
こうでもしないと、またかわされるのが目に見えていたからだ。
ほんのりと染まる頬に、とろりと蕩けてしまいそうな目。
思わず襲ってしまいそうな程の色香に唾を飲み込む。

「ちょっと、聞いてもいいっスか?」
「んー?何だよ…」
「先輩は好きな人っているんですか…?」
「………いるよ」
「え!?だ、誰!!?」
「煩い…」
「え、あ…スイマセン」

どうせ乱菊さん等と言って誤魔化すのだろう。
そうは思えど、やはり気にはなる。

「で、誰なんですか?」
「んー、ヒ・ミ・ツぅ」

人差し指を一本だけ立てて、唇に付ける。
語尾にハートでも付きそうな勢いで言われ、普段なら男がやっても気持ち悪いだけ。
しかし修兵、惚れた相手である。
鼻血が出ないように鼻を摘む。

「そ、そんな事言わないで、教えてくださいよ」
「だーめ、教えない」
「じゃあヒント!」
「ダメだって。教えられないんだよ」
「何でですか…理由は?理由くらいならいいでしょ?」

なかなか引き下がらない恋次に多少機嫌を損ね始めている修兵。
理由を言わなければこの場は絶対に引き下がらないと言わんばかりの恋次を見て溜息を吐く。

「……る、から」
「え?」

ぼそりと呟かれた声は騒ぎの中では聞き取れなかった。
耳を寄せると今度はしっかり聞き取れた。

「俺が、大切だとか、好きだとか思ったものは、この手から直ぐに零れ落ちるから… それを守るためなら、例え、死んだほうがマシだと思うような、拷問をされても、言うつもりはない」

恋次が修兵に初めて会ったのは、霊術院の時。
それ以降のことは何も知らないが、魂葬の実践に起きた事は知っている。
恋次が何も答えられないでいると、修兵はコップの半分くらいまでに入っている酒を一気に飲み干す。
そこで限界が来たのか、机と仲良しになってしまう。

「……だから、お前の気持ちに答えられないんだ」

一滴だけ零して閉じられた目。
呟かれた言葉に驚く。
自分の良いように解釈してもいのだろうか。
それはまるで、修兵も自分のことを想っているように聞こえる。

「だったら、もう容赦しねぇ」












恋次の猛烈なアタック攻撃に、結局「好き」だと認めて言ってしまう修兵。

2009.03.21


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