俺がいじめたみたいじゃないか(阿+修)
「…っ、ひ…ひっぅ、ひっ」
「…………泣くなって」
「わ、分かって…っる、けど…っく」
小さい頃から慣れ親しんだ技術開発局では、
クールで格好良く、何でもそつ無くこなし、頭脳明晰眉目秀麗な、
九番隊副隊長檜佐木修兵からは想像出来ない姿が見放題だ。
部下も後輩も居なくて気が緩むのか。
途端に泣き虫のあの頃に戻ってしまう。
この前も落ちた紙をタイミングよく入ってきた修兵が踏んづけ、滑り、
後ろにひっくり返って後頭部を強打した。
確かにしばらくは悶絶するような痛さの音だったが、
大の大人が(しかも100歳は過ぎた)1時間以上泣くだろうか。
その前は俺が間違えて修兵が楽しみにしていた高級ウィンナーをツマミに1本空けてしまい、
大泣きしながら怒鳴られ、謝っても弁償すると言っても聞く耳持たず。
結局、暴れたのと大泣きしたのとが残業した体に響き、疲れ果てて眠るまで続いた。
この件は貰い物とはいえ高級品(しかも好物)を一人で食べてしまった自分が悪いというのもあり。
美味いと有名でなかなか手に入らない酒と、あのウィンナーには及ばないがそれなりに高い物を持って、
改めて謝りに行ったのだ。
そして、今。
瀞霊廷で最も人気の高い恋愛小説を読み終え号泣中。
眼鏡の奴に無理矢理読まさせられた為、内容は自分も知っている。
修兵のことだ、泣くだろうとは予想していたが、
誰がここまで泣くと予想できただろうか。
予想外だ。完璧に。
「あ、あこっん、は…何で、泣かな、いんだ……折角、っく、ひっ」
「二人が結ばれたのに病気で死に別れたからか?」
「う、ぅうう…」
思い出してまた泣けてきたのか。
言葉も出ないようで頷くだけ。
「作り話だろうが。修兵が死ぬってなら別だがな、紙の中での事で一々一喜一憂してられるか」
そうきっぱりと言い放ち、吸っていた煙草を灰皿に押付け、煙を吐き出す。
傍から見ると完璧にお兄ちゃんに意地悪されて泣いている弟の図だ。
阿近の今の言葉で泣きながらも笑って(器用な奴だ)、いきなり阿近に飛びつく。
離さないとでも言わんばかりの強さで抱きしめられる。
正直、苦しい。
「………あ、あこーーーーーーんっ!」
「ぅおっ!?あ、おい!修へ、てめ!鼻水が付く!!離れろ!!!!」
「俺…俺も、阿近が死ぬなら別だからぁ!!!」
「分かったから離れろーーーーーーー!!!」
お前が俺の傍で、いつも泣くから俺がいじめてるって言われるんだ!
カプじゃなければ幼馴染的な存在だといいなーっていう妄想。