「二番隊は隠密鬼道って別隊を兼ねている隊で、隊長は四楓院夜一って女の死神だ」
「おんみつきどー?」
「…まぁ、細かいことはその内な」

大きな拳西の後を小さな修兵が小走りで付いて歩く。
まるで軽鴨(かるがも)の親子みたいな光景に、癒された者は多いだろう。









うちの子です。




なぜ拳西と修兵が二番隊へ足を運んでいるのかというと、 修兵を九番隊で(むしろ拳西が)正式に預かることになったので、各隊の隊長に挨拶回りをするためだ。
二番隊隊舎に着くと、直ぐに夜一の所に通された。

「お主が流魂街の子供か!儂は夜一じゃ。名は何と申す?」
「檜佐木修兵です!よろしくお願いします!」
「うむ。可愛い奴じゃの〜」

わしゃわしゃと修兵の髪を撫でくり回し、可愛いと連呼しながらも目は新しい玩具を見つけた子供のモノだった。
どうして良いか分からない修兵はされるがままで、夜一の目つきと、その様子に気づいた拳西が助け船を出す。

「次もあるからこの辺で失礼するぜ。行くぞ修兵」
「う、うん。夜一さん、さようなら」
「いつでも遊びに来るんじゃぞー」



「…三番隊はローズの隊だが……あ、おい!隊長はいるか?」
「はい、あの…鳳橋隊長は他の隊へ訪問に行っております」
「そうか。悪かったな、呼び止めて。行くぞ修兵」
「はぁい、ありがとうございました」
「え!?あ、どういたしまして…」

ちょうど近くにいた隊士にローズの居場所を聞くも、隊舎にはいなかった。
知らない子供にお礼を言われ(むしろ拳西の霊圧に隠れて居たことに気づかなかったため)驚く隊士。
修兵はローズに会えなかったことが残念で隊士のことは気にせず、拳西を追う。
修兵の足と拳西の足では歩幅が違いすぎるため、自然と小走りになって追いかける健気な姿に、 思わずキュンとしてしまったのは仕方ないだろう。



「四番隊は怪我や病気を治すところだ。隊長は卯ノ花って女の死神で、100年以上も隊長をやってる大ベテランだ」
「こんにちは!檜佐木修兵です、よろしくお願いします!」
「あらあら、元気があって大変よろしいですね。私は卯ノ花烈と申します。 こちらこそよろしくね、修兵君…ところで、六車隊長?」
「……なんですか?」
「修兵君の栄養状態があまりよろしくないようですが、普段の食事はどのようなものを? 修兵君はまだ子供ですから六車隊長と同じ時間に食事をするほかに、 オヤツを朝と昼の間、昼と夕方の間に二回増やしておあげなさい。 食後にデザートを付けるのも良いですよ。なるべく多くカロリーを取らなければ、 いつまで経ってもパサパサの髪の毛にカサカサの肌に細く小さい体のままです。 それでは修兵君が可哀想だとは思わないのですか?そもそも…」
「分かった!分かりました!俺ら次もあるので失礼します!!」

ひょいと修兵を脇に抱えて脱兎の如くその場(卯ノ花)から逃げた。

あのままあの場所にいたらきっと小一時間は注意というなの説教をくらっていただろう。
拳西だって隊長なのだ。
やることは沢山あり、暇じゃない。
挨拶回りなんてさっさと終わらせて、おそらく白が遊び呆けて溜まった仕事を片付けたいのが本心だ。
このまま行けば一日潰してしまいそうだと考えた拳西は、時間短縮することにした。

「修兵、ちょっと予定変更するぞ」
「?」
「六番隊の朽木銀嶺隊長と、八番隊の京楽春水隊長、十三番隊の浮竹十四郎隊長にだけ挨拶に行くぞ」
「真子兄ちゃんたちは?」
「既に顔見知りなんだ、今から挨拶することなんざねぇよ」
「そっか!もう、よろしくお願いしますって言ったもんね!」
「そう言うことだ」

銀嶺、京楽、浮竹に挨拶をして(三人とも修兵のためにお菓子を準備して待っていたので、 修兵の両腕には沢山のお菓子が抱えられていた)自隊に戻ると何やら中が騒がしかった。
嫌な予感が拳西の眉間に皺を寄せさせた。

「…戻ったぞ」
「遅かったやんか、拳西!待ちくたびれたで!!」
「みんなで修兵君の歓迎会をしようって言ったじゃないか。忘れていたのかい?」
「……は?」
「なんや、ホンマに忘れとったんか!しょーもないやっちゃのぉ」
「いや、忘れたも何も、初耳なんだが…?」
「なんやて?俺はちゃんと言うたで……白に」
「「………」」
「…白?」

ちゃっかり修兵と一緒に豪華なお菓子などを食べている白に聞く。
口の回りはアンコときな粉がついていて、どちらが子供か分からないような状態だ。

「うん?」
「お前、拳西に言わなかったんか?」
「うん、吃驚させようと思って!拳西に言ったら絶対ボロが出るもん」
「出さねぇよ…」

理由が理由だけに怒る気も失せてしまった。

「まぁ、あれやな。ちゃんと拳西に言わへんかった俺も悪かった」
「いや気にすんな。アイツが楽しそうなら…っと、ついでだココで済ましちまおう、修兵!」

ラブに口の回りを拭いてもらっている修兵を呼ぶ。
すると嬉しそうに振り返る。
(おそらくみんなこの顔にやられたのだ)

「なぁに、けんせー」
「改めて挨拶しちまえ」

せっかくみんな居るのだから、と。
この場にいるのは挨拶回りに行かなかった隊の隊長ばかり。
ととと、テーブルの上のお菓子を囲むみんなの元へ小走りに近寄る。

「ん?どうしたんだ、修兵」

一番最初に気づいたのはラブ。
ぐりぐりと頭を撫でてやると、えへへ、と嬉しそうに笑う。

「えっと、これから九番隊にお世話になります!檜佐木修兵です!よろしくお願いします!」

ぺこり、小さな頭を下げる。
上げたときの顔は一仕事して晴れやかだ。

「おお、ちゃんと挨拶できたな!よし、食え食え」
「エラいなぁ、修兵」
「こちらこそよろしゅうな」
「今更やんけ。まぁ、よろしくな」
「いーい、修ちゃん!拳西にイジメられたら白の所に逃げておいでね!蹴っ飛ばしてあげるから!」
「拳西に限ってそれはないと思うけどなぁ…まぁ、何あったら僕にも頼って良いからね」

流魂街に居た時には有り得ない大人達の態度。
温かさに包まれた修兵も温かい気持ちになった。

「修兵、早く食べないと無くなるぞ」

修兵の後ろに立つ拳西。
ぱっと笑顔で振り向く。

「うん…あ!」
「どうした?」

急に何かを思い出したようで動き出そうとした体をぴたりと止めると、くるり、拳西に向き直る。

「けんせーも、よろしくお願いします」
「おう」












碧様 10000キリリク『拳仔修で修兵を九番隊で預かる事になったことを全隊長に報告しに行く話』
大変長らくお待たせ致しまして申し訳ございませんでした!!!!
このようなお話でよろしかったでしょうか;;
碧様のみお持ち帰り可です。キリリクありがとうございました!!

2010.05.25


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