謎の美女、現る。




院生最後の長期休暇で一時帰宅をしていた修兵。
去年は護廷十三隊に入る為に追い込み勉強をしていた所為で拳西とのんびり過ごせなかった。
今年は入隊も席官入りも、このまま気を抜かずにいればほぼ確定だと教師に言われているので帰宅してまで勉強する必要は無い。
ただ鈍(なま)ってしまうといけないから、苦手分野を中心に復習はする。
昼間、拳西は仕事でいないので、この内に掃除と洗濯を終わらせる。
溜まっていた洗濯物を二回に分けて洗濯して、あまり使われていない部屋の整理し、ハタキで埃を下に落としてから箒でゴミを掃く。
廊下はバケツに水を入れて、雑巾を濡らし固く絞ったら一気に拭く。
雑巾掛けは意外と体力を使うので、体を鍛えるには持って来いだろう。
家中隅から隅までを綺麗にして、満足そうに「よし!」と頷く。
時計を確認すると、ちょうどお昼の時間。
何か軽いものでも作って食べよう。そう思ってエプロンを着けた時。
玄関から知ってる霊圧を4つ感知した。
何か拳西に用事でもあるのか、と考えて玄関までそのままの姿(着流しにエプロン)で向かう。

「あの、拳西さんならー……!!」

玄関の戸を開けながら言った言葉は途中で切れた。
何故なら素早い動きで戸を押さえて、僅かにできた隙間から修兵の後ろへ回り、ガッチリと腕と足とでホールドされてしまったからだ。
目の前には白とリサ、ひよ里が怪しい笑みを浮かべて立っている。

「な!なな何で、すか!?」
「ごめんねー、修ちゃん」
「ちょお面貸しぃ、修兵」
「何、大人しくしておれば痛いことはせん」
「ちょっとの辛抱や。我慢しぃや」
「え?え…っわ、あ!!?」

ホールドしていたのは夜一で、手足を解くと逃げる暇も無く修兵を横抱きにする。
次の瞬間には5人はその場から消えていた。






「……………………あの、これは、一体…?」

あれよあれよと連れて来られたのはどこかの隊舎の使われていない一室。
修兵の格好は、着流しにエプロンから死覇装に変わっていた。
死覇装と言っても、基本が。
丈はリサと同じくらいのミニで、黒いレースが裾に付いていている。
袖はばっさり切られ、二の腕まである黒い手袋を着け、腰帯には端にレースの付いた物を。
そして・・・。

「何で化粧する必要があるんですか…?」

長めの髪先を緩く巻いて、ほんのり桜色のチーク、唇はグロスで艶やかに。
睫にはビューラー後、マスカラで長さとボリュームを。

「修ちゃん肌ぴちぴちー!すべすべー!」
「刺青してるの隠さなアカンからどうらん塗ったんやけど…不味った?」
「それは仕方ないじゃろ、と言うより刺青なんぞしている方が悪い!しかし男にしておくには勿体無いくらいじゃな」
「流石、貴族やな。ほら、修兵、鏡で自分見てみぃや」

言われるままに渡された鏡を覗き込む。

「…誰だ」
「誰って修兵、お前やんか」

鏡に映ったのは見慣れた自分の顔ではなく。
69の刺青も綺麗に隠され、別人のようだった。

「ボケッとせんと!これから行くところがあんねん!シャキシャキ動かんかい!」
「あいたっ!」

呆然と鏡に映る別人の自分を見つめていた修兵の背中をバシ!と叩いて行動を促す。

「ど、どこに行くんですか…?外はあんまり…あの、恥ずかしいんですけど」
「決まってるやろ。その姿で男を悩殺するんや!」
「えええぇぇぇえっ!!!?いいいい嫌ですよ!!俺は女じゃないんですよ!?」
「えー?でも修ちゃん、今は女の子みたいに綺麗だよ?」
「いやいやいや!無理ですって!無理!!」
「男じゃろ!!腹を括らんか!!!」

部屋から出るのを拒否する修兵を無理矢理引っ張るも抵抗されてしまう。
無理だの嫌だの恥ずかしいだのと言って隙あらば逃げ出そうとする修兵に、隊首会の時間で部屋を出ようとした夜一の喝が入った。
逆らえない上にこれ以上は何を言っても無駄だと悟った修兵は、しぶしぶ歩き出した。
がに股になる度にリサに注意されながら。

歩き方に少し慣れてきた頃、とうとう知り合いに会ってしまった。

「皆さんお揃いで、どうかしたんスか?」
「志波やんけ。ちょうどええとこに来たな」
「は?」

修兵が今会いたくない人の一人である海燕だった。
ぽりぽりと頬をかいていたが修兵と目が合うとその目が大きく見開かれた。
バレたのかと焦る修兵に近づく海燕。

「見ねぇ顔だな…新人か?」
「せや!美人やろ!」
「おう、名前何て言うんだ?」
「え、檜佐………」

咄嗟に檜佐木修兵だと言いかけて慌てて止めた。
本名を言えば直ぐにバレてしまう。
それは何としても避けたかった。恥ずかしすぎる。

「ひ、さ?ヒサってのか!俺は志波海燕だ。よろしくな!」
「よ、よろしく…お願いします」

途中で止めたのが幸いして海燕はサヒという名前だと思い込んだようだ。
そのまま海燕と分かれてまた歩き出す。

「ぶわははははっ!!!!」
「志波は馬鹿やな。普通霊圧で気付くやろ」
「完璧に騙されとったで!!!!」
「しばらくはコレで遊べるねー」

ひよ里、リサ、白が騒いでると、ちょうど隊首会が終わったのか、前方に拳西・平子・ローズ・ラブ・浮竹の姿が。
反射的に逃げようとした修兵をリサがしっかり腕を掴んだ為、逃亡は失敗に終わる。

「けーんせー!!」

大きく手を振りながら拳西を呼ぶ白。
それに拳西だけでなく周りも振り向く。
拳西が白に気が付く途端に怒声が飛んだ。

「白!!てめぇ仕事はどうした!!!」
「そんなことより、こっちこっちー!!」
「そんなことじゃねぇだろ!!!」

どすどす床を踏み鳴らし白の近くに寄る。

「ほら!美人でしょー!」
「わっ!」
「あ?」

近くに来た拳西に修兵を前に押し出す。
吊り上げられていた目は、修兵を見て驚いたように見開いた。

「……何してんだ、修兵」
「え!?……あ、あはは」
「何だ?化粧までされてるのか?」
「あ、はい…き、気持ち悪いですよね、男がこんな…」
「………いや、心配なくらいだ…」
「え?」
「何でもねぇ」

正体がバレたと分かると顔を赤くして俯き、もじもじと恥ずかしそうにする修兵にぼそりと拳西が呟くも、修兵には聞こえなかったようだ。

「しっかしエライ化けたもんやなー。別人や別人」
「せやろ!うち等の手にかかれば当然やな!」
「ま、ひよ里がやったんとちゃうからやろ」
「何だと、クソ真子!!」
「修兵クンが女だったらこんな子になったのかもね」
「案外、可愛いぞ」
「そんな…可愛いなんて嬉しくないですよ」
「久しぶりだな修兵!こんなに綺麗になって!」
「あ、浮竹隊長こんにちは…お久しぶりです」

ラブにわしゃわしゃと頭を撫でられ、平子とひよ里は喧嘩を始め、浮竹からは飴をもらった。
できれば一刻も早くこの場から立ち去って着替えたい。
化粧を落とすついでに緊張で掻いた汗を流したいので風呂も入りたい。
そんな修兵の心境を悟ったのか、拳西が頭を撫で続ける羅武の手を退けた。

「おら。さっさと着替えて、化粧も落として来い」
「はい、じゃあ皆さん、先に失礼します!」

覚えたての瞬歩でその場から去る。

その後、拳西の反対も虚しく瀞霊廷通信の表紙に 女装修兵・リサ・白・拳西・ラブ・ローズ・浮竹、小さく取っ組み合いをしてるひよ里と平子が使われていた。
偶然取材の帰りにそこを通った九番隊隊員が撮影したものである。
ヒサに惚れた海燕は、後日浮竹から正体を聞いて一瞬騙された、と愕然したものの。
ヒサは修兵である故に修兵に惚れたのだと至り、事ある毎に修兵にアタックをするが、 拳西に追い返されたり返り討ちにされたりで想いはこのまま一方通行で終わる。












風花様 3300キリリク『拳西達に育てられた修兵設定で修兵女装話』
こんな感じでよろしかったでしょうか?
風花様のみお持ち帰り可です。キリリクありがとうございました!!
どんな格好をさせようか考えるのがとっても、楽しかったです。

2009.05.24


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