物心つく前から変なモノが見えた。
ソレらは大人より大きいモノもいれば、手の平に乗ってしまうような小さいモノまでいた。
俺は生まれつき火や水、風なんかを自由に使えた。
当時は感情の起伏で暴走したりして人間の子供とは遊べなかった。
だから自然とソレらと遊ぶようになった。
小さいモノとはいくつか遊ぶようになったが、大きいのとは遊ばない方がいいと小さいのに言われた。
大きいのは知恵があるから、と。
知恵があるとどうして遊んではいけないのか、幼い脳みそでは理解できなかった。









籠の中の遊戯




雲ひとつない晴天。
処刑場に人だかりができている。
人だかりの中には橙色の少年、一護もいた。
一護の視線の先には、黒い髪の小柄な女の子。
斬罪とされたルキアの姿。
淡々と罪状を読む役人。

「…以上が朽木ルキア処刑人の罪状である。何か最期に言い残すことは?」

それまで目を閉じて静かに罪状を聞いていたルキアは、顔を上げ目を開きはっきりと言う。

「ありません」

その目はこれから死ぬ人間の目ではなかった。
強く真っ直ぐな目。

「そう、その目だよ」
「、な!?」
「だ、誰だ!!?」

突然目の前に現れた黒い人に、役人と見届け人だけでなく野次馬も驚いた。
ルキアも目を見開いて驚いたが、それが昨日の者だと分かると口を開く。

「戯け、来るのが遅いぞ」
「こちらにも準備があったんですよ、準備が」

やれやれと肩を竦め、ルキアに施されていた枷を外す。
自由になった手足を動かして感覚を確かめる。
なんとも無い様子をみて、黒い人は一護を呼んだ。

「一護、ちょっと来てくれないか」
「お、おう!」

人だかりの中を目立つ橙が駆け寄ってくる。
だが、一護が駆け寄る前に別の人物が一護とルキア達の間に入った。
その人物は…

「藍染隊長…市丸隊長、東仙隊長……?」

十三守護の三番隊、五番隊、九番隊の隊長を務める三人だった。
その姿にルキアは思わず体を構えた。

「君は一体何者なのかな?」
「…ふ、それをアンタが聞くのか」
「何?」
「まあ、分からなくても仕方ないよな。あれから気が遠くなるほどの月日が流れて俺も成長したし」
「……まさか、」

遠くなるほどの月日、成長、これだけで何か分かったのか藍染は口に笑みを浮かべる。

「藍染はん?誰やの、この子」
「フフフ、彼は僕の暇潰しの玩具さ…ね、修兵」
「……まあ、…否定はしねえよ」

嫌そうな修兵の声に、藍染はますます笑みを深くした。
それは見ているこっちもぞくりと鳥肌が立つほどの。

「嬉しいな、君にまた会えて。あんなに大切にしてあげたのに、どうしていなくなったりしたんだい?」
「よく言うぜアンタから逃がしたくせに…」
「まさか僕の力をうまく使いこなせるようになってるとは思わなくてね」
「あんたから逃げたくて無我夢中で従わせたのさ」

藍染達の背後にいる一護に目配せをして、彼らが見えない位置でルキアに手でサインを送る。
一護が頷いたのを合図に修兵は動き出した。

「なんなら試してみるか?」

風車に似た形の真っ黒な鎖鎌を自らの影から取り出すと藍染に向かって行く。
だがその刃は藍染に届く前に止められる。

「何だよ、関係ないやつは出てくんな」
「藍染様には触れさせない」
「ふーん…やってみろよ」

ぎゃりん、と火花が散るほどの摩擦を起こして距離をとる修兵。
片方の鎖鎌を東仙に投げる。
風を切るような音を出しながら迫るそれは東仙の持っている刀で防がれる。
防がれたそれは東仙の後方に飛ぶ。
素早く刀を持ち直した東仙が修兵に切りかかろうとした。

「甘いな」
「!?」

ひゅん、という音が聞こえた瞬間。
衝撃が体に伝わる。
全盲の彼には見えないが、背中に刺さった鎖鎌が貫通して胸の辺りから先端を除かせている。
ごぽり、込み上げる命の雫。

「ごふっ…き、貴様…」
「うわ、まだ生きてんの?」

刺さってい無い方の鎌を振り落とす。
椿の花のようにぽとりと転がり落ちる体に繋がっていた頭。
血飛沫を上げながら倒れた体から刺さったままの鎌を抜き取ろうとした。
その瞬間。
上体を後ろに反ると鼻先擦れ擦れで刃物が横切った。

「あっぶね!」
「あらら、避けられてしもうた」
「……仕込み刀か?」

修兵と市丸の距離は普通の刀では届かないような距離だ。
だが、市丸が手にしているのは脇差程度の短い刀。

「あったりー」
「そーゆーの卑怯っていうんだぜ!」

乱暴に鎌を抜き取り血がべったりとついたままの鎌を投げる。

「さっきと同じ手はくらわへんよ!」
「同じじゃねえよ」

口に握った手を当てて息を吸い込む。
そして吐かれた息は青白い炎となって市丸に向かう。
真正面から向かってくる炎を容易く避けると仕込み刀を振るう。
それは少し湾曲しながら修兵に向かってくる。
その刀を素手で掴み止める修兵。

「え!?」
「こういうのって間接部分を掴まれたら戻せないんだろ?」

にたり、と笑う。
掴んだ手から青い炎が噴出す。
それは刀を伝って市丸に向かった。

「さようなら」
「あ、うあああああ!!!!あっ、あああああああぁっっ!!!!」
「これやると煩いから嫌なんだよな…」

東仙と市丸をあっという間に亡き者にしてしまった。
見ている者の驚きは計り知れない。
そして呟かれる『化け物』という言葉。
だが、修兵の合図で藍染達から離れた一護とルキアは、化け物と言われた一瞬、修兵の変化に気づいた。

「…なんか今、悲しそうだったな」
「戯け。化け物と言われて傷付かないやつが居るか」
「だよな…何でそんなこというんだろ。助けてくれてるのに」
「………こればっかりは難しい問題なのだ…」












最強にして最凶。

2010.11.9


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