ログ4
修兵を海に連れて行った。
別に行きたいとごねられた訳じゃないが(テレビに海が映る度噛り付くように見入ってれば嫌でも分かる)どちらかと言うと、
連れてって、と我が儘(にもならないが)を言って欲しかった。
だって、俺が行きたいように見えるじゃないか。
俺は行きたいと言ってもらって連れて行きたかったんだ。
拳西には仕事があるので遊びに行くのは休みの日だ。
当然の様に海などという場所は人でごった返している。
更に小さい子供は何にでも興味を引かれる生き物だ。
ほんのちょびっとでも目を離したら姿がなくなっていたりする。
例に漏れず、修兵も本当にちょっと目を離した隙に忽然と姿を消した。
海の家でカキ氷を買った時に財布からお金を出す。
その一瞬、手を離しただけだったのに。
「まだ餓鬼の癖して大人びた態度ばっかりとるんですけど、アイツ人見知りするから、
きっと今頃知らない大人に囲まれて怯えて泣いてるんですよっ!」
「そうですね、迷子ちゃんの名前は?」
「檜佐木修兵!七歳!!襟足だけちょろっと伸びてて黒髪に右半面に三本の傷跡がある男の子っ!!」
これ!これ!と言って首から下げているロケット(しかもハート型)を開けて見せながら迷子の特徴を言う。
「まあ、先ずは落ち着いて下さいよ」
「これが落ち着いてられるか!!」
「でもねぇ…あら、すでに此方で保護してますね」
「本当か!?」
「ええ。ちょっとー、修兵君連れて来てー」
ベンチの方に座っていた別のお姉さんが子供の手を取って歩いてくる。
その子供は拳西の姿を見つけると勢い良く走り出した。
「ししししし、しゅう、しゅうへっ!!!」
「わ゛ぁぁー!!げんぜぇー!!!」
「もー絶対離さねえからな!馬鹿野郎!」
「げんぜぇ、もおー、俺先行ってるって言ったのに迷子にならないでよぉー、ばかぁー!」
「一人で泣いていたので保護したんですが、良かったね〜修ちゃん」
「お手数お掛けしました…よし、このまま抱っこして戻るぞ」
「うん…お姉さん、ありがとぉございましたぁ」
「もう迷子にならないようにね!ばいばい!」
なんやかんやあって一緒に暮らす拳西(社会人)と修兵(七歳)の現代パロ。
親馬鹿な拳西。
修兵のことになると慌てて冷静でいられない拳西が書きたかったんです。
2009/06/15のエムブロの小ネタより