Gold Eyes.
虚に襲われていた流魂街の三人の子供。
そこに虚の討伐で出ていた拳西達が通りかかり、助けに入ろうとすると、
三人の内一番小柄な子供が虚に向かって霊力の塊を放った。
それは虚の頭に当たり、虚は一瞬動きを止め、隙が出た。
その隙を見逃さずに部下四人が足を切りつけ動きを封じ、拳西は相棒の断地風で頭を一刀両断する。
虚が倒れたのを確認してから子供の方を振り返ると、先の子供は地面に倒れ、ぐったりとしていた。
「修兵!」
「しゅーへー!」
他の二人の子供が駆け寄り、拳西も慌てて膝を付き抱き起こす。
「おい、しっかりしろ!どっか怪我でもしたのか!?」
「……ぅ、」
「………違う」
細い方の子供が口を開く。
拳西の腕の中で、今にも目を閉じてしまいそうな子供を、眉間に皺を寄せて見たまま。
「何故だ?」
「…今日まで五日間、水しか口にしてないんだ。それなのに、走って、霊力使って…きっと、限界なんだ」
「い、五日も!?」
後ろで様子を見ていた衛島が声を上げて驚く。
話しの中にある言葉から読みとるに、己の腕の中で弱々しく呼吸をしている子供には霊力があり、
腹が減って体力がないのに虚に襲われ、霊力も使ったと。
「バカ修兵…」
「…………」
「死んだら、一生、許さねぇからな」
痩せて棒切れのような細い腕を上げようとして失敗したところを見逃さず、
小さな手を握って修兵に向けていた視線を拳西に移す。
それは何かを決意したような、力強い、真っ直ぐな目だった。
「霊力があると死神になれるんだろ。修兵は将来、絶対大物になる。俺が保証する。
だから…だから連れて行けよ。頼むから…助けてやってくれよ。修兵を、俺の、義弟(おとうと)を死なせないでくれよ…!」
「……………」
必死に訴えるその声は少し震えていた。
だが、その目に光るのは涙ではなく、純粋に家族を想う意思。
「ぼ、僕からも!お願いします!大切な義弟(おとうと)なんです!」
大柄な子供が拳西に向かって頭(こうべ)を垂れた。
この子供が助かるなら、自分達と離れ離れになっても構わないと言うのか。
「僕達はお腹が空かないから、修兵が苦しいのが分からないし…死神さん達なら分かってあげられるでしょ?
それに死神になれれば空腹の心配はないはず」
「……俺がコイツを連れて帰っても、俺が預かる事になるかはわからねぇぞ。
もしかしたら元気になったら流魂街の違う地域に移されて終いかもしれねぇぞ。そうなったら二度と会えなくなる。それでもか?」
最悪の事態を予想してワザと突きつける。
しかし実際に霊力の見受けられる子供を他隊で保護したはいいが死神になれるまでの霊力では無かった為、
流魂街の食べていくには困らない地区に移っただけに終わった事があった。
全くのありえない事でもない。
「それでも」
「…………」
どこまでも真っ直ぐな目。
拳西は大きく溜め息を吐くと、大きな手で子供の頭を撫でる。
「しかたねぇ…行くぞ」
「隊長!?」
「あ…ありがとうございます!」
驚き慌てる部下を無視して修兵、と呼ばれている子供を抱いたまま立ち上がる。
拳西に力があるからか、子供が痩せているからか、おそらくはその両方。
腕にあるはずの重さは驚くほどに、ない。
「日が暮れる前に帰れよ、ガキ共」
「はい!修兵をよろしくお願いします!」
「ねー、拳西」
今までどこに行っていたのか、白がひょっこりと現れ、拳西の腕の中でぐったりとしている子供を見つめる。
「てめぇ、白…今までどこ行ってやがった」
「それよりさぁ、この子の目!」
「…目?」
「さっき金色になったよね?」
「……俺が知るかよ」
「えぇ〜!何で何で気になるぅ〜!!」
「っせぇな!!後で本人に聞けばいいだろ!!行くぞ!!」
「ぶ〜!拳西のアホチン!」
やはりあれは見間違いではないようだった。
色が変わったのは霊力を使った時。
このことが気がかりで引き取ったのもある。
後は、家族を想う強い心。
「何もなければそれに越したことはないんだが…」
そういう特異体質であれば一番いい。
帰路に着く中、子供を抱きしめる力を少し強くして、心の中だけで呟く。
突発的に浮んだネタを書き殴っただけです。藍染達のことは綺麗サッパリ無かった事に。