Don't make passes at my younger student.




阿散井が護廷十三隊に入隊した。
学院でもそうだったらしいが、頭髪と刺青の所為で上の人間の受けが悪いらしく。
見る度にどこかに怪我をしていたり。
ワザとぶつかられていたり。
見ている方が頭にくる様な陰湿で卑劣な嫌がらせを受けていた。
そんな状況で執務を教えてもらえるはずも無く、頼れる同期の二人に聞いてどうにかこなしていた。
では二人が忙しくて時間が無ければ?
ちょっとでも期限に遅れたり誤字脱字などの修正箇所があったりしても教えてくれるわけではない。
無言でつき返されるのはまだ良い方で、
酷い時は怒られる上に粉々に破かれてゴミ箱へ捨てられて修正箇所も分からないのだと。

入隊して3ヶ月。
腕はメキメキと上達しており、席官でも問題ないくらいだった。
が、執務の方が滅茶苦茶でどうしようもなければ昇格は無理だ。
阿散井には目標がある。
本人には確固たる意思があるようで、その話しを語ってくれた時の眼差しはどこまでも真っ直ぐだった。
なので、どれだけ大事な存在なのかも分かった。

なら、可愛い後輩の為に先輩が一肌脱いでやらねば誰が手を差し伸べるというのだ。
阿散井には参考資料を渡して、それでも分からないことがあるなら自分に聞けと言っておく。
のみ込みの早い奴だからきっと資料だけでも十分理解してどうにかなるだろう。
問題は上官達だ。

どうしようかと考えていた所にタイミングよく絡まれている阿散井を見つけた。
事情を知っていて、尚且つ、よく観察しなければ分からないだろう。
気配と霊圧を消して近づいて行く。
近くまで寄ると声が聞こえてきた。

「最近執務でミスが減ったんだってな」
「誰かに教えてもらってるんだろ? お前みたいな鳥頭じゃ直ぐに忘れちまうから無駄だろうに。可哀想だな、そいつ」
「もしかしてお前に気があるんじゃないのか?」
「っは、ベッドの上で教えてもらっているのか!傑作だな!」
「良かったな、気持ち良く勉強ができてよ!羨ましいぜ!!」
「…そんなに羨ましいのか?」

我慢できたのは途中までだった。
二人の内、片方の死神の肩に手を置く。
怒りのメーターが吹っ飛ぶと笑うって言うのは本当みたいだな。

「ひ、檜佐木副隊長!!」
「お疲れ様です!!」
「…せ、先輩?」

眉間に皺を寄せて嫌味に耐えていた阿散井の目が驚きに見開かれた後、
不味いとでも思ったのか慌てるような表情になった。
それを横目に二人の死神に向く。

「すいませんね、ちょっと聞き捨ててならない言葉が聞こえたもので。
コイツ俺の後輩で、執務は俺が教えてやってるんだよ。
聞けば隊では質問しても答えてもらえないんだとか?
おかしいと思わないか?入隊して直ぐの部下に何も教えないなんて」

青褪めて目を合わせようとしない二人から反論はない。
心当たりがあると顔に書いているような固まり方。
それを確認して、とどめの一発を放つ。

「ベッドの中でなんか教えたことは一度も無ぇんだよ。侮辱罪で副隊長に話させてもらう」
「そ、そんな…!」
「それだけは!」
「悔やむんなら、人の通る場所で周りに聞こえるように話して部下をいびっていた事だな。
全員に言っておけ。俺の"可愛い"後輩に手出してんじゃねぇってな!」
「「は、はいいいぃぃぃっっ!!!!!」」

ばたばたと急いで逃げ去る二人が見えなくなったとこで阿散井を見やる。
バツの悪そうな顔をしてこちらの機嫌を伺っていた。
本当は言いたいことがあったが、そんな顔をするものだから笑ってしまった。

「な、何で笑うんっスか!」
「いやだってよ、怒られる前の犬みたいで…」
「犬って…ひどいっスよ先輩」
「まーまー。これでちょっとは楽になるだろ。お前んところの副隊長にもちゃんと話ししておくから」
「何から何まで、本当にスイマセン…」

申し訳なさそうに頭を下げてくるので、その頭を引っ叩いてやった。
勿論、何故叩かれるのか分からない阿散井は勢い良く頭を上げる。

「お前が謝るような事したのか?してないだろ。俺は他の言葉が欲しいんだが」

その言葉に一瞬ぽかん、としたが、言いたいことが分かったのか。
今度は笑顔でちょっと照れるように頭を下げた。

「ありがとうございました!」
「おし!今日の昼奢りな」
「…えぇ!?」
「冗談だ」












テーマは後輩想いのカッコいい先輩…。タイトルは「俺の後輩に手を出すな」です。

2009.02.15


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